船場吉兆廃業に思う家作りの心
船場吉兆がついに廃業となりました。
同じようにお客さんを相手に仕事をしてる身にとって、
重たいニュースです。
何か基本的なところが欠落してるのでしょうか。
会社でも個人でもそうですが、
存在する意味があると思うのです。
個人であれば幸せになりたいのが人の望むところです。
幸せかそうでないかは心が決めることです。
その心を動かすのは何かというと、
お金でも欲望の達成でもありません。
自分が理想とする姿になりつつ
廻りの人にも喜んでもらうのが、
心が求める幸せでしょう。
自分のやりたいことを時間も忘れて打ち込んで、
それがそのまま震える喜びとして廻りに響いていけば言うことはありません。
これは会社でも同じように思います。
食事を用意し心配りをして、喜んでもらうのが全ての中心になり、そのことそのものが自己を表現する、船場吉兆が存在する意味だったはずです。
こんな豊かな世の中ですから、食べるものはいくらでもあります。
その中で、
お金を使ってでも食事をするからには
大きな理由があるはずです。
美味しいものを素敵なおもてなしの中で、嬉しいです。
高価な食材でなくても
招待した側の主人の心に触れることができたなら、
それだけで呼ばれたお客さんは嬉しいはずです。
思えばこれが千利休の目指したことかもしれません。
千利休が活躍した当時の堺は、
世界的に見ても豊かな社会だったようです。
世界各地の名品が集まり、
良いものであればいくらでも高く売れたようです。
食べるものも各地から集まってきたんでしょう。
こんな風に想像します。
権力とお金さえあれば何でも手に入り、
全ての欲望は叶えられる、
人と比べてみて幸せな気分になれると錯覚が横行したのかもしれません。
現代と同じで、あの高級料亭で高い食事をしたから結構なこととの錯覚と同じかもしれません。
この中で、
招待する側と呼ばれる側の
語り合いのみに焦点を絞ろうとしたのが本来の茶席なのでしょう。
廻りの欲と権勢の渦の中とは異質の茶席を作り上げると、
そこから心を絞るような感激が生まれ、
そして茶人たちは命を賭けたのですね。
家作りでも同じです。
住む家なら今ではいくらでもあります。
マンションはある、建て売りはどこにでもあるし、格安の家もあります。どれを選んだとしても寝食をするにはあまり問題はないかもしれません。
では、どうして自分の望む家作りを人は追い求めるのでしょうか。
作り手にしても、どうしてこだわりを保ち続けるのでしょうか。
結論から言えば自己の表現と、廻りの人が喜びを感じるためです。
作り手は高性能な家を作ったり、
優れた技術を発揮したりして自己を表現したいものです。
家作りを発注する人は
自己の趣味や住まい方を目の前に形にしたいのだと思います。
ここで家作りは終わりません。
ここからさらに
他の人へ喜びを与えるにはどうしたらって思うところに事の本質があるようです。
そうすると性能や機能やデザインだけに話が留まりません。
格好良くでき上がった家でも、なんかあの家落ち着かないではいけません。
洗練された家であるから、不思議とこちらまで凜となってすがすがしいと思って欲しいです。
と、訪れた人まで巻き込めれば最高です。
感じ方はいろいろで、
気兼ねなくいける暖かいわ、
ホッとする暖かさね、というのも素敵ですよね。
作る人、住む人、訪れた人、
それぞれの心のときめきが家作りの本体です。
心を置き忘れずに日々を送りたいものです。
「サイドバー」と『お気に入りの本』も注目。コメントは読後感であり私的評価です。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
自分の幸せを追い求めた結果ではないでしょうか?
自分が幸せになりたいなら、まず人に幸せになってもらう。
そこの徹底が出来ていなかった結果だと思います。
お互いにそうならないように頑張りましょう。
投稿: あつきちしお | 2008年5月30日 (金) 07時22分
tatsuroさん、こんちは。
船場吉兆さん、やめちゃいましたね。
「吉兆」がね~。
吉兆の茶道具納めてた人や、吉兆のしつらいを指導してた人を知ってるのですが、
イイ方だったんですがね~。。
会社の所帯が大きくなると、維持していくだけでも、相当大変なんでしょうが。。
まあ「つくる」人間は、やはり第一がイイものつくりたい。喜んでもらいたい。
じゃなきゃ、ダメなんじゃないかと思います。
会社組織としては、利益を上げる事が第一で、その辺甘く考えてると、結局は、皆様に迷惑をかける事になってしまうんですが、、、
あまりにも、それを求めすぎると、変な方向にいっちゃうのでしょうかね。
心は大事ですね。
投稿: hiro | 2008年5月30日 (金) 14時14分
使いまわしは下座のお客さんを中心に行っていたそうですね。元々の前社長が養子だったので、他吉兆に対しての対抗意識と億を越える借金でしょうね。
ワンマン社長で、料理の腕、発想力はピカイチで会社を拡大させた人物。雲の上の存在で、意見できるものは誰もいなかったそうですよ。
こんな工務店、よくありますよね。
謙虚さと素直さ、お客様への感謝の気持ちが本当に大切ですよね。
姉歯事件と同じように、他の料亭も「おたくも使いまわししてるのと違う」と言われて大変な迷惑をかけています。エゴで突っ走るのはホント勘弁して欲しいですね。
投稿: gonsuke | 2008年5月31日 (土) 10時58分
ちしおどの こんばんは
自分オンリーで考えるとそうなるようです。
自戒して頑張ります。
投稿: tatsuro | 2008年5月31日 (土) 19時29分
hiroさん こんばんは
プライドのある作り方は基本的なことで誰にも譲れません。さらに他を思う心があれば鬼に金棒です。
反対に自分のことだけだと、自分オンリーになると終わるんでしょう。
禅問答みたいですが、世の中での事実だと思います。
だから心が大切なんでしょう。
投稿: tatsuro | 2008年5月31日 (土) 19時32分
gonsukeさん こんばんは
優れた技術はとても重要ですし、作り手にとっては最も大切なことです。
けれど、自分は他者に生かされてることを忘れてはならないと、教えだと思います。
投稿: tatsuro | 2008年5月31日 (土) 19時35分