「背割り」木造建築の工夫
軒先はこうなっています。
上の写真がそうです。化粧の垂木で3尺出しています。
2階の小屋はというと
となっています。
上の方に見えているのが屋根の野地板と言われるものです。
「野地」とは木造建築の世界の用語です。
「野」とは鉋をかけて「仕上げをしていない」という意味です。「野物」というと荒削りの板などのことです。
「地」とは「隠れる」という意味です。
ですから「野地板」とは仕上げをしていない荒削りの隠れる板という意味です。
どこに隠れるのかというと天井の上に隠れます。ここの部分は斜めの天井になりますけどね。
ここで気づいて欲しいのは隠れるところも無垢の板を使ってることです。合板は使わないようにしています。
左から右に流れているのが太鼓梁です。それを支えるのが画面左下にある大黒柱です。
この柱を良く見ると縦にスジが通っています。
このスジは「背割り」です。
「背割り」には無垢の木を使う上で大事な役目があります。
木はどんな向きでも性質が同じかというと違います。同じ一本の木から切り出したのだから同じと思うのですが、実際は違います。
違う性質を強制的に同一にしようとする目的で作られるのが「合板」あるいは「集成材」です。収縮を抑え、なおかつどの方向へも一様に変化するものを目指した結果できたのが合板です。
無垢の木はどのように方向に違うのでしょうか。
一本の木をまるまる取り出した丸太を取り出してみましょう。
丸太は円に近い形をしています。
この円に接する方向の木の収縮率と
円の中心へ向かう半径上の収縮率は違います。
接線方向の収縮率を 10 とすると、半径方向は 5 です。
こんなに違うんですね。
半径30cmの丸太の周長は30×3.14で94.2cmです。
この丸太が収縮して直径が1パーセント縮んで29.7cmになったとします。
このときの接線方向の収縮率は2パーセントですね。
(半径方向:接線方向 = 5 : 10ですから。)
直径30cm周長94.2cmの丸太が2パーセント縮むと
「92.31cm」です。
一方、そのとき縮んでいる直径29,7cmの周長は
29.7×3.14で「93.25cm」となるはずです。
どうでしょうか「92.31cm」と「93.25cm」違いますね。
この食い違い、92.31cmと93.25cmの差 約1cmもあります。
この1cmのつじつまを合わせるために無垢の木は割れます。ほっておいたら表に見えるところにも割れが入ります。
この割れを一カ所に集中させる工夫が「背割り」です。
背割りをしたところはもう割れていますから、
この割れた幅が広がります。
一カ所で集中的に広がることにことにより、
他の面が割れないですむ、こんな工夫が木造建築にはあります。
「サイドバー」と『お気に入りの本』も注目。コメントは読後感であり私的評価です。
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